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海岸・港湾

流氷による構造物被害

りゅうひょうによるこうぞうぶつひがい

流氷による構造物被害とは

流氷による構造物被害(りゅうひょうによるこうぞうぶつひがい)とは、海氷や河川氷等の氷塊が風や潮流、波浪によって漂流・集積し、沿岸・港湾の海洋構造物や河川施設に衝突・接触することで生じる摩耗、変形、亀裂、倒壊、部材欠損などの物理的損傷現象のこと。氷塊が構造物に静的または動的に押し付けられる水平氷圧力、氷塊同士が乗り上げて重なり合うパイルアップ現象による鉛直・水平外力、潮位変動や波浪に伴う氷塊の上下動による引抜き力や衝撃力など、多様なメカニズムによって発生する。外郭施設である防波堤や護岸、消波ブロックのほか、海底や水中に設置された取水・排水施設、係留施設、橋脚などが被害の対象となる。港湾・海岸工学および土木施工管理においては、構造物の要求性能を確保するため、通常の波力や水圧のみならず、氷塊の厚さ、強度、移動速度に応じた耐氷設計や防護工の設置、維持管理段階での被災予防策を講じることが重要とされる。

全国の基準

海岸法第14条第1項において、海岸保全施設は地形や海岸の状況を考慮し、自重、水圧、波力、土圧及び風圧並びに地震、漂流物等による振動及び衝撃に対して安全な構造でなければならないと規定されている。これを受け、海岸保全施設の技術上の基準を定める省令第3条第1項では、堤防及び護岸の要求性能として、設計高潮位の海水、設計波または設計津波の作用に対し、海水の侵入防止、越波減少、侵食防止の機能確保が義務付けられている。また、港湾法第56条の2の2に基づく港湾の施設の技術上の基準を定める省令第14条第1項においては、外郭施設である防波堤の要求性能として、港湾内の水域の静穏を維持し、船舶の安全な航行・係留、貨物の荷役、港湾施設全体の安全を確保することが定められている。全国基準においては、主として風、波浪、高潮、地震動、および一般的な漂流物(流木等)の衝撃が設計外力として想定されており、氷海域特有の海氷・流氷による大規模な氷圧力については個別の特殊設計基準に委ねられている。

教科書どおりにいかないところ

教科書や土木施工管理の全国試験では「海岸・港湾構造物の設計・施工は、主として設計波浪の外力や高潮・津波の越波、洗掘対策を考慮すれば足りる」と教わる。しかし、オホーツク海沿岸をはじめとする北海道の寒冷沿岸域では、厳冬期に来襲する巨大な流氷塊が構造物を直接圧壊・損傷させるという、本州の標準設計基準では想定されない極めて過酷な実務上のパラドックスに直面する。流氷は単に水面に浮遊して漂着するだけでなく、強風や潮流に押されて氷塊同士が激しく乗り上げ・堆積する「パイルアップ現象」を引き起こす。これにより、海底に設置した水深のある取水施設天端にまで氷塊が潜り込んで直接衝突・破断させたり、防波堤の上部工やパラペットを押し倒したりする甚大な被害をもたらす。さらに、消波ブロックの噛み合わせ部への氷塊衝突や氷圧による「足折れ」破断、コンクリート表面の凍結融解(スケーリング)と流氷衝突摩耗の複合劣化など、波浪設計のみに頼った施設配置では致命的な破壊を招く。このため北海道の実務では、海氷観測データに基づく流氷水平力・押上げ力の算定、SPH法等の数値シミュレーションによる氷塊挙動予測、および鋼製防護柵やマウンド形状の工夫による防護工の設置が不可欠となる。

現場での扱い方

  • パイルアップ現象を考慮した水中・海底施設の水深設定と防護工の設置

    流氷来襲海域における取水塔、海底配管、突堤基部などの設計・施工では、通常の喫水深だけでなく強風時に流氷が重なり合って下方に潜り込むパイルアップ深さを想定する。天端水深が十分に見える施設であっても流氷塊の潜入衝突リスクがあるため、数値シミュレーション等により到達水深を検証し、必要に応じて頑固な鋼製防護柵や捨て石マウンドを配置して直接打撃を遮断する。

  • 流氷動荷重と凍結融解に耐えうるコンクリート品質と被覆ブロックの安定性確保

    港湾の外郭施設や消波・被覆ブロックの施工管理においては、波力衝撃に加え流氷の衝突摩耗や凍結融解の繰返し(スケーリング)による劣化進行を抑制する。コンクリートの水セメント比管理、空気量確保、適切な湿潤養生を徹底し、ブロック据付け時は単体ごとの噛み合わせを密実にして、氷圧による突起部の破断(足折れ)や浮遊・散乱を防止する。

  • 流氷勢力・接岸情報の早期把握と冬期休工・海象監視体制の構築

    オホーツク海沿岸での海洋土木工事では、1月中旬から3月下旬にかけての流氷接岸期に先立ち、作業船(起重機船・土運船等)の早期退避や海中仮設工の撤去・固縛を完了させる工程管理を徹底する。気象庁や海上保安庁の海氷情報、衛星画像、小型漂流ブイ観測データを常時監視し、予期せぬ流氷の急接近による作業船団の氷閉塞事故や構造物衝突事故を未然に防止する。

資格試験での出題

2級土木施工管理技士施工管理技術検定の第一次検定(専門土木:海岸・港湾)において、海岸保全施設および港湾外郭施設(防波堤・護岸等)に作用する波浪、潮位、漂流物等の外力に対する安全性確保や構造形式の選定に関する知識が問われる。

参考(一次情報)

関連する工種で、資格取得を支援する道内の会社 144社

出所:北海道入札参加資格者名簿の加点項目「技術者の育成」。会社の自己申告ではありません。

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