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ダム・トンネル

トンネルの支保工

とんねるのしほこう

トンネルの支保工とは

トンネルの支保工(とんねるのしほこう)とは、山岳トンネル工法(NATM工法等)において、掘削直後の地山の緩みや崩落(肌落ち・落盤)を防ぎ、トンネル空洞の安定を確保するために設置される一次支保構造物の総称である。主に掘削面に吹き付けて地山と密着一体化させる「吹付コンクリート」、地山内部に定着させて周辺岩盤の耐力を引き出し支保環を形成する「ロックボルト」、および掘削直後の切羽近傍を物理的に支持し建込み枠として機能する「鋼製支保工(鋼アーチ支保工)」、ひび割れ防止と剥落防止のための「金網(ワイヤメッシュ)」等によって構成される。従来の矢板工法のように木製や鋼製の枠組みだけで土圧を支えるのではなく、地山自体が持つ保持力を最大限に利用してトンネルを支える構造形式であり、地山性状や計測結果(内空変位・天端沈下等)に応じて支保パターンを適宜選定・変更しながら施工される。

全国の基準

労働安全衛生規則第391条では、ずい道支保工の構造について「地山に係る地質、地層、含水、湧水、き裂及び浮石の状態並びに掘削の方法に応じた堅固なものとしなければならない」と定められている。また同規則第392条に基づき、部材の配置・寸法・材質を示した「標準図」をあらかじめ作成して組み立てなければならない。さらに同規則第394条第2号イにより、鋼アーチ支保工の建込み間隔は「一・五メートル以下」と義務付けられ、脚部の沈下防止に皿板を用い、主材のアーチ作用確保にくさびを打ち、つなぎ材等で強固に連結することが規定されている。点検に関しては同規則第396条により、設置後は「毎日及び中震以上の地震の後」に部材の変形・緊圧度合・脚部沈下等を点検し異常時は直ちに補強することが義務付けられている。国土交通省土木工事共通仕様書(案)では、吹付コンクリートは湿式方式とし「一層の厚さを15㎝以下」で地山に密着施工すること、金網の継目は「15㎝以上重ね合わせる」こと、鋼製支保工は切羽近くに速やかに建て込み転倒防止のつなぎ材を締付けることが規定されている。

教科書どおりにいかないところ

全国標準の教科書では「NATMの支保工は地山の自己保持力を活かし、標準的な支保パターンに基づき吹付厚やボルト本数を設定し、内空変位収束を確認して安定させる」と習う。しかし、北海道の山岳トンネル実務では、この標準理論を破綻させる過酷な地域要因(強大膨圧と寒冷環境)に直面する。北海道中央部を南北に走る神居古潭変成帯周辺等には広大な蛇紋岩地帯が分布する。北海道開発局の音中トンネル(延長4,686m)の施工記録にもある通り、破砕された蛇紋岩地山ではトンネル史上まれに見る強大な塑性圧(膨圧現象)が発生し、標準的な鋼製支保工の座屈や圧壊、トンネル閉塞に至る変状を引き起こす。そのため、通常の単層支保では耐えられず、中央導坑先進工法や真円断面での「真円三重支保構造」、インバートの早期閉合といった極めて重厚な特殊支保が必須となる。さらに積雪寒冷地である北海道では、冬期の坑口部から吹き込む冷気により吹付コンクリートが初期凍害を受け、強度発現が大幅に遅れて肌落ち・剥落事故を誘発するリスクが高い。計算上の岩盤力学だけを信じ、北海道特有の蛇紋岩膨圧と冬期の寒冷環境を想定していなかった技術者が、支保工圧壊や施工停止に直面する点がトンネル支保工の実務的な落とし穴である。

現場での扱い方

  • 蛇紋岩・強大膨圧地山における多重支保と早期断面閉合

    神居古潭帯などの蛇紋岩や著しい破砕帯を掘削する際は、標準的な支保パターンでは変位を拘束できず支保工座屈に至る。地山変状の早期把握に向けてA計測(内空変位・天端沈下)を高頻度で実施し、必要に応じて多重支保(三重支保等)や早期インバートコンクリート打設による環状断面閉合(リング閉合)を速やかに行い、耐荷力を高める。

  • 冬期坑口部における吹付コンクリートの防寒養生と温度管理

    冬期にトンネル坑口部から氷点下の冷気が進入すると、吹付コンクリートが初期凍害を受け、強度発現の遅延や背面地山からの剥落・肌落ちを招く。坑口部に防寒カーテンや扉を設置して坑内温度を保つとともに、急結剤の選定・添加率の厳格管理、温風暖房器による坑内加温を実施し、硬化完了まで凍結を防ぐ温度環境を確保する。

  • 施工基準に基づく支保工建て込み(1.5m以下・15cm以下)と日常点検

    労働安全衛生規則第394条に基づき鋼アーチ支保工の建込み間隔を1.5m以下とし、国土交通省共通仕様書に従い吹付コンクリートの一層の厚さを15cm以下で地山に密着施工する。さらに同規則第396条に則り、ずい道支保工の設置後は毎日および中震以上の地震の後に部材の損傷・変形、緊圧度合、脚部沈下を点検し、変状発生時は直ちに補強を行う。

資格試験での出題

2級土木施工管理技士施工管理技術検定の第一次検定および第二次検定において、山岳トンネル(NATM)の支保工部材(吹付コンクリート、ロックボルト、鋼製支保工)、労働安全衛生規則に基づく建込み間隔(1.5m以下)および点検頻度(毎日・地震後)、吹付コンクリートの一層の厚さ(15cm以下)、ロックボルトの機能と配置が頻出する。

参考(一次情報)

関連する工種で、資格取得を支援する道内の会社 144社

出所:北海道入札参加資格者名簿の加点項目「技術者の育成」。会社の自己申告ではありません。

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