土留め(山留め)
どどめ(やまどめ)
土留め(山留め)とは
土留め(山留め)(どどめ/やまどめ)とは、地盤の開削工事や基礎工事等において、掘削箇所の周囲の地山が崩壊したり土砂が崩落・流出したりするのを防ぎ、作業空間を安全に確保するために設置される仮設構造物の総称である。主に土圧や水圧を直接受ける土留め壁(鋼矢板、親杭横矢板、軽量鋼矢板、地中連続壁等)と、それを背面から支持する土止め支保工(腹起し、切梁、火打ち、中間支持柱、グラウンドアンカー等)によって構成される。掘削深さや地質・地下水位、敷地境界・隣接構造物の有無などの周辺環境に応じて、自立式、切梁式、アンカー式等の架構形式が選定される。施工にあたっては、土圧による側方変位を抑制し、周辺地盤の沈下や掘削底面のボイリング、ヒービング、盤膨れなどの地盤破壊を防止することが不可欠であり、基礎工および仮設構造物管理における最重要工種の一つである。
全国の基準
労働安全衛生規則第369条では、土止め支保工の構造について「地山に係る形状、地質、地層、き裂、含水、湧水、凍結及び埋設物等の状態に応じた堅固なものとしなければならない」と定められている。また同規則第370条に基づき、矢板、くい、背板、腹おこし、切りばり等の部材の配置、寸法、材質並びに取付けの時期・順序を示した「組立図」をあらかじめ作成し、これに従って組み立てなければならない。さらに同規則第373条では、設置後に「七日をこえない期間ごと」、ならびに中震以上の地震の後および大雨等により地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後に、部材の損傷・変形・変位・脱落、切りばりの緊圧の度合、接続部・交さ部の状態を点検し、異常時には直ちに補強・補修することが義務付けられている。2級土木施工管理技士の検定試験では、土留め壁の部材構成、支保工の点検周期(7日以内)、作業主任者の選任・職務、ボイリングやヒービングの発生機構と防止対策が頻出分野となっている。
教科書どおりにいかないところ
全国標準の教科書では「土留めは標準的な土質定数とク―ロンやランキンの土圧公式に基づき、掘削深さに応じた断面選定と切梁配置を行えばよい」「砂質土ではボイリング、粘性土ではヒービングを照査する」と学ぶ。しかし、北海道の現場実務では、全国標準の計算モデルを根本から無力化する2大地域要因(泥炭性軟弱地盤と地盤凍結・融解)による過酷なパラドックスに直面する。寒地土木研究所のマニュアルが示す通り、北海道には道内全域で2,000km2もの広大な泥炭性軟弱地盤が分布する。未分解の植物遺骸を多く含む泥炭は、極めて高い含水比と圧縮性を持ち、せん断強度が極小であるため、標準的な粘性土のヒービング計算を大幅に超える流動的な底盤破壊や過大な側圧が発生し、親杭横矢板の隙間から泥炭が流出して背後地盤の急速な陥没を招く。さらに、冬期に地盤が深く凍結すると、土留め壁背面にアイスレンズが発達して強大な「凍結土圧」が壁体や切梁に作用し、通常の許容応力度を容易に超過する。春先の融解期には、凍結層が一気に軟化して間隙水圧が急上昇し、受働土圧の低下と側圧の不均等による壁体のはらみ出しや切梁の脱落事故が頻発する。計算上の土圧理論だけを信じて寒冷地特有の泥炭流動と凍結融解挙動を織り込まなかった技術者が、土留め崩壊の重大事故に直面する点が北海道基礎工の特有の落とし穴である。
現場での扱い方
泥炭地盤における水密性壁体の選定と底盤改良の併用
泥炭層が介在する地盤での開削では、土砂や水の流出を防ぐため、親杭横矢板を避け、継手部に止水処理を施した鋼矢板工法や地中連続壁を採用する。また、泥炭の流動やヒービングを防止するため、不透水層・硬質地盤までの十分な根入れ長を確保するとともに、掘削底面付近に深層混合処理等の地盤改良工(底盤改良)を先行施工して受働抵抗力を高める。
凍結土圧の発生と融解期の側圧急変に備えた計測管理
冬期に土留めを開削状態のまま維持する場合、地盤凍結に伴う凍結土圧によって切梁軸力が急激に増大する。壁体背面の凍結深さに応じた防寒保温対策(断熱マット被覆等)を施すとともに、ロードセルによる切梁軸力測定や傾斜計による壁体変位計測を日常的に実施する。特に春先の融解期は受働側強度の低下と過剰間隙水圧により崩壊リスクが最大化するため、監視体制を強化する。
出来形規格値(基準高±100mm)の管理と法定点検の厳守
北海道開発局の土木工事施工管理基準に基づき、仮設鋼矢板やH鋼杭の出来形管理では、施工延長40mにつき1箇所の割合で基準高(規格値±100mm)の測定を確実に実施・記録する。あわせて労働安全衛生規則第373条に則り、土留め設置後は7日を超えない期間ごと、ならびに大雨や中震以上の地震の後に部材の損傷・変形・緩みおよび切梁の緊圧度合を点検し、安全性を維持する。
資格試験での出題
2級土木施工管理技士施工管理技術検定の第一次検定および第二次検定において、土止め支保工の構造・部材構成(親杭横矢板、鋼矢板、腹起し、切梁、火打ち)、労働安全衛生規則に基づく点検頻度(7日以内ごと、大雨・中震後)、作業主任者の選任・職務、掘削時のヒービング・ボイリング防止対策が頻出する。
参考(一次情報)
- 労働安全衛生規則 第2編 安全基準 第6章 掘削作業等における危険の防止 第2節 明り掘削の作業 第2款 土止め支保工 第369条(構造)・第370条(組立図) ↗出所:e-Gov法令検索/確認日:2026-09-23
- 労働安全衛生規則 第2編 安全基準 第6章 掘削作業等における危険の防止 第2節 明り掘削の作業 第2款 土止め支保工 第373条(点検) ↗出所:e-Gov法令検索/確認日:2026-09-23
- 国立研究開発法人土木研究所 寒地土木研究所 寒地地盤チーム 泥炭性軟弱地盤対策工マニュアル(平成29年3月改訂) 改訂の背景 ↗出所:寒地土木研究所/確認日:2026-09-23
- 国土交通省 北海道開発局 土木工事施工管理基準 及び規格値 令和6年10月版 第2編 出来形管理基準 第2章 一般施工 3-2-10-5 土留・仮締切工 ↗出所:北海道開発局/確認日:2026-09-23
関連する工種で、資格取得を支援する道内の会社 205社
出所:北海道入札参加資格者名簿の加点項目「技術者の育成」。会社の自己申告ではありません。
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