Tsukuras
河川・砂防

地すべり対策(集水井・集排水ボーリング)

じすべりたいさく(しゅうすいい・しゅうはいすいぼーりんぐ)

地すべり対策(集水井・集排水ボーリング)とは

地すべり対策(集水井・集排水ボーリング)とは、斜面の一部または全部が地下水の影響や素因となる地質・地形条件によって緩やかに下方へと移動する地すべり現象を防止・軽減するため、地すべり活動の主因となる地下水を排除・低下させる代表的な抑制工法のこと。集水井(しゅうすいい)は、地すべり地内の安定した地盤に設置されるライナープレート等を用いた円形縦井戸であり、井戸の内部から周囲のすべり面や帯水層に向けて放射状に多数の集水ボーリング(横孔削孔)を施工し、深層の地下水を効率的に捕捉・集約する。集約された地下水は、井戸底部から自然流下または排水ボーリングによって地すべり区域外の安全な水路や河川へ強制的に排出される。地すべりの推進力となる間隙水圧を低下させ、すべり面付近の有効応力を回復させることで斜面の安全率を高める地下水排除工の中核技術である。

全国の基準

地すべり等防止法第2条において、地すべりは「土地の一部が地下水等に起因してすべる現象又はこれに伴つて移動する現象」と定義され、排水施設をはじめとする地すべり防止施設の設置・管理が規定されている。国土交通省の土木工事共通仕様書(案)第8編砂防編第3章斜面対策第7節「地下水排除工」では、集水井の施工にあたり常に観測(監視)計画等によって地すべりの状況を把握し、掘削中の地質構造や湧水状況を詳細に記録して異常が確認された場合は速やかに監督職員へ報告することが義務付けられている。掘削前・掘削途中で多量の湧水が生じた場合や、予定深度まで到達しても排水目的が達成されない場合は設計図書に関して指示を受け、現地状況により設置位置や深度に支障がある場合は監督職員と協議しなければならない。また、集排水ボーリング工では孔口法面を整形して崩壊を防止し、保孔管を削孔全長に挿入すること(原則として硬質塩化ビニル管)、せん孔完了後に孔径・延長・施工業者名等を記した標示板を設置することが定められている。

教科書どおりにいかないところ

施工管理技術検定や標準的な土木教科書では「地すべり対策は降雨に伴う地下水位の上昇を抑えるため、集水井や集排水ボーリングを適切に配置して地下水を速やかに外部河川等へ自然排水すれば安定する」と教わる。しかし、北海道における地すべり実務では、豪雨以上に「春先の融雪」が最大かつ長期的な地すべり誘因となり、冬期の極寒・多雪環境が排水施設の機能を物理的に阻害するという決定的な地域的課題が存在する。道内では冬期に積雪として地表に蓄積された膨大な水分が、春先に一斉に融解して地中へ浸透し、数週間にわたり地下水位と間隙水圧を高止まりさせるため、融雪期に地すべり活動が最も活発化する。一方で、厳冬期には集水井の坑口や外部へ通じる排水ボーリングの吐口部、排水路が氷結・雪埋めによって閉塞しやすく、機能不全に陥った状態で春の融雪出水を迎えると、逃げ場を失った水が斜面内部に滞留して突発的な再滑動を引き起こす危険がある。北海道では昭和32年の知方学地区での着手以来、令和6年度末現在で67箇所が概成しているが、設計理論上の排水勾配を満たすだけでなく、吐口部の凍結防止保温対策や積雪荷重への耐性確保、融雪期前の点検・通水維持を徹底することが実務上不可欠である。

現場での扱い方

  • 融雪出水期に向けた排水吐口部の凍結・閉塞防止と事前点検

    厳冬期の氷結や雪圧による集水井および集排水ボーリング吐口部の閉塞を防ぐため、排水管出口の保温措置や凍結深度以深への埋設配管、防護柵の設置を徹底する。地すべり活動のピークとなる春先の融雪水浸透に備え、冬期明け直後に坑内や排水管の土砂堆積・凍結状況を点検し、速やかに通水機能を回復させる。

  • ボーリングせん孔中の湧水・地質変化に伴う迅速な協議と追孔判断

    土木工事共通仕様書に基づき、集排水ボーリングのせん孔中は湧水量やスライムの変化、断層・き裂の出現を詳細に記録する。予定深度で所期の地下水が捕捉できない場合や異常出水が生じた場合は、直ちに監督職員に報告・協議し、帯水層の位置に合わせてストレーナー配置や削孔延長・方向の設計変更を機動的に実施する。

  • 集水井掘削時における地すべり動態観測と連動した施工安全管理

    地すべりブロック内での集水井掘削は斜面バランスを崩すリスクを伴うため、地盤伸縮計やパイプ歪計、孔内水位計による動態観測をリアルタイムで継続する。仕様書に定められた監視計画に従い、ライナープレートの変形や異常出水、地盤変位の数値を常時照合し、変状兆候を察知した際は直ちに作業を中断して退避・防護措置を講じる。

資格試験での出題

2級土木施工管理技士施工管理技術検定の第一次検定(専門土木・河川砂防、地すべり防止工)において、抑制工(地下水排除工、排土工等)と抑止工(アンカー工、抑止杭等)の分類、集水井の構造・施工管理上の留意点、集排水ボーリングの保孔管規格が頻出する。

参考(一次情報)

関連する工種で、資格取得を支援する道内の会社 144社

出所:北海道入札参加資格者名簿の加点項目「技術者の育成」。会社の自己申告ではありません。

この用語について

分からなかった点や、現場でのエピソードを運営に送れます。送った内容がこのページに表示されることはありません。

種別